入れ歯にしてからドライマウスに?口の渇きを改善する8つの方法

「入れ歯を使うようになって、なぜか口が渇いてしまう」という声を耳にします。確かに唾液の分泌量は年齢とともに少なくなってしまうということもありますが、入れ歯を入れたことも唾液量に関係することがあるのでしょうか?

そこで今回、お口の渇きと入れ歯の関係性をご心配の方に、お口が渇く原因や改善方法をご紹介します。

 

 

入れ歯を使用していて口が渇く理由は?

口が渇いてしまう原因は、加齢によるものだけではありません。薬の副作用やほかの疾患の症状のひとつとして現れることもあります。 このようにさまざまな要因が考えられますが、入れ歯が関連して起こる口渇の要因は以下のような事柄です。

 

1.入れ歯が大きすぎて唾液腺をふさいでいる

唾液はお口の中にたくさんある「唾液腺」という穴から分泌しています。大きすぎる入れ歯を使っていると、必要以上に唾液腺を塞いでしまう恐れも。

たとえば舌の裏の筋付近や、下の奥歯あたりには大きな唾液腺があります。入れ歯を支える義歯床が大きすぎると塞いでしまう可能性があります。

 

2.噛むための筋肉が衰えてしまう

人は「噛む」という機能を使うことによって唾液腺を刺激します。唾液腺周辺の筋肉が動くことによって唾液を押し出すのです。噛む回数が少なく筋肉が衰えてしまうと、唾液の分泌も少なくなり、唾液腺自体の機能の衰えにもつながってしまうのです。

また、入れ歯が大きすぎて舌の納まる空隙が狭くなり、舌の動きが悪くなってしまうと舌筋が衰え、唾液の分泌を阻害することにつながります。

 

3.入れ歯が合っておらず、ストレスになっている

緊張すると口の中が渇く現象。これは交感神経が優位に働くために唾液の分泌を抑制してしまうことによって起こります。合わない入れ歯を使っていることがストレスとなり、交感神経優位の状態が続くことで唾液が減っていることも考えられます。

 

 

ドライマウスがもたらす悪影響とは?

口が渇く症状を「ドライマウス」といいます。この症状はお口の中でさまざまな悪影響を引き起こす要因となってしまいます。どんな悪影響があるのでしょうか?

 

1.細菌が繁殖し、虫歯や歯周病、口臭の原因になる

唾液には「自浄作用」や「殺菌作用」があり、お口の中の細菌の活動を抑える働きがあります。唾液の分泌が少ないと細菌が繁殖し、虫歯や歯周病になりやすい環境となってしまうのです。 歯周病が重症化してしまうと膿が溜まったり、深くなった歯周ポケット内の汚れが腐食したりすることによる口臭が発生することにつながります。

また、口臭の原因となる「舌苔」も、唾液による自浄作用が働かないため乾燥し、強い口臭の原因となってしまいます。

 

2.歯茎と入れ歯がこすれて傷つきやすくなる

唾液は、自浄作用や殺菌作用の他に、口の中の「潤滑材」としての役割も担っています。 唾液の分泌が少なくなり、口の中が乾燥した状態のまま入れ歯を使用していると、入れ歯と粘膜が擦れて傷ついてしまいます。

この傷から口内炎になり、本来なら唾液が口内炎を治す上でも働くのですが、その効果も少なく逆に細菌が活発化しているため、口内炎ができやすく治りにくいという悪循環を招いてしまうのです。

 

3.入れ歯が安定しにくくなる

入れ歯の中でも特に総入れ歯に関しては、歯ぐきと接する部分である「義歯床」と歯ぐきの隙間に唾液があることによって吸着し安定する作用があります。ですから唾液が少なくなって口の中が乾燥した状態になると、入れ歯がなかなか安定せず、外れやすくなってしまいます。

 

 

唾液量を増やし、口の渇きを改善する8つの方法

では、唾液量を改善し、口腔内の状態や入れ歯の使い心地を良好に保つにはどうすればよいのでしょうか?

 

1.入れ歯を調整してもらう

まずは歯科医院で原因となっている入れ歯を調整してもらいましょう。大きすぎて唾液腺を塞いでしまっている部分の床を削ったりといった対処を施します。

 

2.唾液腺のマッサージを行う

長期間お口が渇く状態であった場合、唾液腺自体が衰えている可能性も考えられます。そこで唾液腺を刺激して唾液の分泌を促す、マッサージをおこないましょう。

唾液腺には「3大唾液腺」と呼ばれる大きな唾液腺があります。耳の下あたりの「耳下腺」、舌の下にある筋あたりにある「舌下腺」、顎の下あたりにある「顎下腺」です。これらを外側から指で押さえて、刺激を与えてみてください。

 

3.歯科医の指示のもと薬の変更や人工唾液を使用する

常飲している薬の影響で唾液が少なくなっている場合、変更可能な薬があれば主治医に相談してみるのも改善方法のひとつです。

どうしても変更できない薬の場合もあるでしょう。そのような場合には「人口唾液」を活用し、口の中の潤いを保つ方法もあります。種類もジェルタイプやスプレータイプなどさまざまで、ドラッグストア等で購入でき、比較的簡単に使用することができます。

ただし使用の際には、かかりつけ歯科医に必ず相談するようにしましょう。

 

4.1日3食、よく噛んで食べる

唾液の分泌を促すためには、唾液腺を刺激することです。そのひとつが「よく噛む」ということ。

 

入れ歯になると、自身の歯で噛んでいたときよりも噛みにくくなります。そのため、入れ歯の部分を避けて他の歯で噛んだり、以前より噛む回数が減ってしまったりという方も多いようです。

噛む回数が減ることによって唾液の出る腺が委縮されてしまい、唾液が出にくくなってしまうという報告もあります。

 

お口を動かすことで唾液腺を刺激し、良い唾液をどんどん分泌できるよう、1日3食よく噛んで食べることを心掛けましょう。

 

5.ストレスをためない

唾液は体の状態によって、分泌される量や性質に変化があります。

たとえば、イライラしたり興奮したりという精神状態のときには、交感神経が優位になっており、唾液は粘液性のネバっこい唾液が出ます。

逆に精神状態が落ち着いておりリラックス状態のときには、副交感神経が優位になることで漿液性のサラサラな唾液が出るのです。

 

この特徴を考えると、常に体にイライラや興奮などが「ストレス」として長期に渡り掛かっている場合、交換神経が優位的に働く時間も長くなります。そして唾液の分泌量が少なくなって口が渇きやすくなるということに繋がるのです。

 

6.こまめな水分補給を心がける

お口の渇きを潤すための対策として、こまめに水分補給することで補うというのも方法のひとつです。

飲み方として、一度にたくさん摂るのではなく、1回にコップ1杯程度(150~250ミリリットル)の量を1日のうちに6~8回に分けて飲むようにしましょう。1日の必要量の目安としては、1.5リットルのペットボトル1本が目安です。

朝起きたとき、通勤して職場に付いたとき、昼食のとき、スポーツするとき、入浴後、就寝前など、自分で1日の中でポイントを決めて飲むタイミングを作るのもよいでしょう。

 

7.口呼吸の癖を改める

本来、人間は正常時に鼻で呼吸をします。しかし様々な要因から口で呼吸をするクセのある方は、お口が常に渇きやすい環境です。また、口呼吸によって就寝時のいびきの原因になることもあります。

 

口呼吸を鼻呼吸にするためには、日頃からお口の筋肉を引き締めて閉じる力をつける体操でトレーニングをおこなってみましょう。就寝時などの意識できないときは、市販されているお口を閉じるテープを利用するのもよいでしょう。

また、鼻づまりの疾患で口呼吸になっている場合は、治療を受けて口呼吸が改善するようにしましょう。

 

8.会話を楽しむ

「おしゃべり」はお口をよく動かしますので、唾液腺を刺激して唾液分泌を促します。

たとえば日中ひとりで過ごすとします。口を動かさずに黙々と仕事や家事をこなしている間のお口の中は、寝ている間と同じで唾液の分泌量が低下してしまうのです。

仲間との楽しい会話はストレス発散にも繋がるため、リラックス状態の副交感神経が働き、唾液の質も良いものがたくさん分泌されることにもつながっています。

 

 

それでも改善しないなら、身体の病気が原因のことも

もしも、さまざまな要因を改善する努力をしてもお口の渇きが気になる場合は、何らかの病気が関連しているのかもしれません。

身体の病気によって口が渇くという症状が見られるものや、飲んでいるお薬の副作用の可能性もありますので、気になるようでしたらかかりつけの病院で相談されてみてください。

 

1.病気の症状として「口が渇く」という症状を持つ病気

 

これらは病気の症状のひとつとして「口が渇く」という症状が現れることがあります。

必ずしも現れるというわけではないものもありますが、口の渇きが気になり原因が解らないことでお悩みの場合、病院で診察を受ける際の参考にされてみてください。

 

2.薬の副作用によるもの

 

病気の治療のために常飲しているお薬の副作用として「口が渇く」という症状が現れるお薬があります。

しかし、そのお薬を自己判断で飲むのを辞めることだけは避けてください。

お薬を変えたり量を変更したりできる場合もありますので、担当医とよく相談の上、改善策を考えるようにしましょう。

 

 

まとめ

唾液は殺菌作用や自浄作用、潤滑作用などさまざまな機能的働きを兼ね備えています。合わない入れ歯の使用がこの作用に弊害をもたらしているのであれば、入れ歯を調整するなどして問題解決することが重要です。

ただし、何が原因で口が渇くのかということを自己判断するのは禁物。必ずかかりつけ歯科を受診して診断を受けるようにしましょう。